皆さんこんにちは、Kです。
今回はSF映画の紹介をします。
SFと言うと、スターウォーズとかスタートレックとか、とりあえず宇宙系の映画が思い浮かびますね。
またエイリアンとかもSFのジャンルですので、意外にもSFと言うジャンルが苦手な方も多いのです。
ただこれは非常に残念。
SF映画は派手なCGとか宇宙人とか、そう言うものだけではないんです。
1つの言う括りではあるものの非常に様々な映画が混在しているのが、SFと言うジャンルの面白いところなんですね。
言わば一口にイケメンと言われても濃い顔から薄い顔からえ、これかっこいいか?と言う顔まで色々な人が居るみたいな感じです。
そのくらいSFは映画によって方向性が異なります。
今回は、そんなSFと言うジャンルにおいて異彩を放ち続ける名作「ガタカ」の魅力を紹介します。
*この記事には設定等の若干のネタバレが含まれています。了承の上お読みください。
「ガタカ」1997年 アメリカ
監督:アンドリュー・ニコル
キャスト:
ヴィンセント・アントン・フリーマン(イーサン・ホーク)
アイリーン・カッシーニ(ユマ・サーマン)
ジェローム・ユージーン・モロー(ジュード・ロウ)
時間:106分
ガタカの魅力1:ストーリーのリアリティ
「ガタカ」の魅力1つ目はやはり物語の設定と流れだと思います。
ただ、観ていない方もいるので大まかなあらすじを紹介しましょう。
舞台はそう遠くない未来、
遺伝子操作で優秀な人材である「適正者」として生まれる事が当たり前の世界で、
主人公のヴィンセントは自然妊娠による「不適正者」である為、多くの弊害が立ち塞がります。
ヴィンセントは小さい頃から宇宙飛行士になる事が夢でしたが、「不適正者」のヴィンセントは病弱な体質や遺伝子的な問題でその夢を叶える事は出来ないと知るのです。
どうにかして夢を叶えようと模索していたヴィンセントは、闇ブローカーを通じてジェローム・ユージーンと出会います。
ジェロームは「適正者」の中でもずば抜けたエリートであり、将来を期待された水泳選手でしたが、彼の身体は事故により歩く事すら出来なくなっていました。
そこでヴィンセントは、「不適正者」としての己を捨て、エリートであるジェロームと成り代わって生きて行く事を誓います。
そしてヴィンセントの血の滲む努力と、ジェロームの協力により、彼らは宇宙を目指すのです。
「不適正者」ながらも、“人の可能性”を信じて限界を越えようとする執念と、困難に立ち向かう姿が非常に熱い作品です。
現実問題としても差別とか生まれとかが何かと取り沙汰される現代ですが、
実際の技術として、予想される疾患を遺伝子的になくす技術はすでに確立されているものもあり、デザイナーベイビー論争に繋がったこともあるので、
遺伝子によって人の生涯が決まる未来も確かに近い気がします。
また、「ガタカ」自体2011年、NASAにより「現実的なSF映画」1位に選ばれた事もあり、人類の今後を明示した映画であると言っても過言ではないのかもしれません。
ガタカの魅力2:頑張るヴィンセント
主人公のヴィンセントは、親の遊び半分の行為によって自らの人生を決められてしまったんですね。
そして親や「適正者」の弟にも疎まれながらも必死に努力します。
その姿には感情移入せざるを得ません。
しかしその努力も非常に儚く散っていきます。
ただ、ヴィンセントは努力するだけではありません。
時にはとんでもない方法を使って、あらゆる難関をパスしていくのです。
物語の展開では、ヴィンセントを待ち受ける試練をあらゆる手段を使って乗り越えていく
スリルと爽快さも際立っています。
そこで、まず本作の見どころであるヴィンセントの苦労をまとめてみました。
・「不適正者」であるにも関わらずガタカの最難関テストを突破
知能的にも劣るヴィンセントは根性と努力で「適正者」にとっても難しいテストを死に物狂いでパスします。劇中ではスコアのあまりの高さに他のガタカ職員も目を置くほど。
小さな頃から宇宙飛行士のための勉強をしていた描写が多いので勉強は比較的得意なのかもしれません。
・病弱なのに肉体改造
ジェロームになりきるには体力や身長が足りません。
元水泳選手のジェロームは身長の公式記録が残っている為、ヴィンセントはそれに合わせて5cm伸ばす必要がありました。結果、嫌だ嫌だと言いながら脚を切られて伸ばす手術をさせられます、これはちょっとかわいそう。
また、心臓疾患のあるヴィンセントは心音を聞かれたらアウトなので、測定の際は本物のジェロームに検査機器をすり替えて取り付けます。しかし、検査員の目の前で走ったりするのはヴィンセントなので本来は心臓が破裂しそうなところを涼しい顔をして居なければなりません。なんとかパスするも、そのあとぶっ倒れます。
・証拠を残さない生活
記録上はジェロームとして生きているヴィンセント、もし自分の髪や細胞を検査されたら1発で他人バレてしまいます。その為に毎日身体の毛や垢を落とし焼却、仕事先のデスクにはジェロームの髪の毛を敢えて置いておくなど日々緊張感のある生活を送ります。
しかし、結局その甲斐なくヴィンセントのまつ毛が拾われて大問題になると言う運のなさ。
ヴィンセントは基本的に運が無いです。
・ギリギリの身体検査
ガタカではよく身体検査が行われます。そもそも入館の際、毎朝微量の血液検査がある上に、「適正者」の中でもエリートを求めるガタカの選考基準は極めて厳しい為、何かある度に尿検査、血液検査のオンパレードです。更にはガタカ内で事件が起こってしまいさらに加えて血液検査などさせられます。
死ぬ程血統主義です。
そんな毎回の検査もヴィンセントは頑張ります。まず指先の採血はジェロームの血を薄い袋状になっている指紋のシールに入れて自分の指に貼り付けます。
家ではほぼずっとこれを作ってます。
尿検査は何だかんだ管かなんかでジェロームのをやつを渡したりします。ただこれも後でバレていた事がわかりますが…
極め付けは抜き打ちの血液検査。
血管からの採血のため逃げようがありませんが、何とヴィンセントは手のひらに隠し持っているジェロームの血液を血管に逆流させてその血を採血させます。凄まじい根性。
果てしなく辛い宇宙への道、
遺伝子操作の無い世界で良かったと思いますね、どちらにせよ私は宇宙飛行士にはなれませんが。
ガタカの魅力3:美しい映像、演出
ガタカ最大の魅力は映像作品としての美しさです。
登場する人物のファッション、建造物、インテリア、車、挿入される音楽、全てにおいて美しいです。(感想)
まずはファッションについて、
衣装デザインは「シザーハンズ」や「パブリックエネミーズ」、「アリスインワンダーランド」などを手掛けた、コリーン・アトウッドです。
ガタカの衣装は近未来の設定でありながらとてもクラシカルです。
特にガタカの制服であるダブルのスーツは印象的で、かっこいいですね。レトロでありながらモード的でもある感じが非常に好みです。
また刑事のアントンのチェスターコートや、アイリーンのドレスなどフォーマルでありながら型にはまりきらないモノトーンのスタイリッシュさがガタカの世界観を構築していきます。
建造物は70年代モダンの雰囲気を醸し出す、特徴的なものが多いです。
ガタカ社はカリフォルニア州のCivic Center。フランク・ロイド・ライト氏の設計によるもので、近代的なデザインながら設計は半世紀以上前のものだとか。
ヴィンセントとジェロームの住まいはPolytechnic Universityというカルフォルニアの大学の校舎を使用しています。こちらもSFチックなデザイン。
アイリーンとヴィンセントが夜明けに歩く太陽光発電パネルが並ぶ場所は、ロサンゼルスから北東に100kmあまりの場所にあるボロンの太陽光発電所。周りには本当に何もないです。
ニュアンスとしてはやはり“一昔の未来イメージ”と言った所でしょうか。
特徴のある独創的なデザインでありながら、懐かしさを感じさせる建造物を登場させる事で、近未来SFというテーマに重厚感を持たせていると思います。
このおかげで、現代の人がイメージする未来を映像にするよりも、ガタカの方が斬新に映るのかもしれません。
音楽
マイケル・ナイマンによる監修です。1998年のゴールデングローブ賞の最優秀映画音楽賞にノミネートされました。
落ち着きがありながら哀愁の漂うサウンドはガタカのSFの世界観には欠かせない要素となっています。
壮大でありながら退廃的な空気を感じさせるのは最近のSFでは基本となっていますが、
ガタカの持つモノクロでミニマルなイメージにうまくマッチした音作りがなされていると感じます。
まとめ
「ガタカ」を一言で表すなら
静かに美しい。
そんな映画です。
SFであり、ヒューマンドラマであり、アートでもあるような存在です。
人の可能性というテーマを、ここまで美しく描いた映画は他にないような気がします。
もし、現実社会に疲れてしまった時に、少し現実から離れたいなと思った時に見てもらいたいですね。
うるさく無く、煩わしく無く、美しくスタイリッシュに、観る人にとって感動を与えてくれるような映画です。
以上、是非一度は見て欲しい作品、「ガタカ」の紹介でした。