突然ですが、あなたが最後にトランプに触れたのはいつだか覚えていますか?
恐らくそんなことは覚えていないでしょう。
トランプと言えば修学旅行などの暇潰しに触ったくらいで、大して気に止めるようなものではないのだと思います。
されど、トランプ
侮ってはいけません
あなたは未だ、強烈な魅力を放つトランプの世界を知らないのです。
本日は世界最高のトランプである「BICYCLE」の魅力について紹介します。
トランプとは
トランプとは何か、まあみなさんご存知ですが少しだけ解説させて下さい。
トランプ、実は英語圏ではトランプと呼ばないんです。向こうでは「playing cards(プレイングカード)」と呼ばれており、トランプという単語は「切り札」という意味なんだとか。
よくある勘違い系の英単語ですね。
因みに日本には16世紀に伝来して、1860年頃から作られています。
トランプの国、アメリカ
日本では玩具としての色が強いトランプですが、海外では本当に様々な種類のトランプが存在します。
中でもアメリカ製のトランプは独自の文化を構成しており、マジシャンが使うトランプは必ずと言っても良い程アメリカ製なのです。
今回はそのアメリカのトランプに注目して綴って行くつもりなのですが、
そもそもなぜアメリカで多くのトランプが製造されるようになったかというと、カジノ文化の影響だと思われます。
街にはホテルやカジノがあり、そこにはポーカーをする場所がある。
しかもポーカーなどトランプを使う賭け事は不正やイカサマが横行します。
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そうなった時、損をするのは店を運営するカジノ側ですから、
不正をさせないようにその店独自のロゴや柄をトランプに印刷するわけです。
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こうして各カジノではデザインの異なるトランプが誕生していきました。
また、その街でしか手に入らない手軽な土産物としてもトランプは非常に人気の品だったのです。
つまりアメリカの街とトランプは切っても切れない関係なんですね。
この様に、店や地域によって異なるトランプが生まれていったことが、アメリカのトランプのバリエーションを増やす要因となりました。
多くの人がトランプを手に取ったからこそ多くのトランプが生まれ、そしてデザインも機能性も洗練されていくことになります。
「BICYCLE」
前置きが長くなりましたが、こちらのトランプの紹介です。
「BICYCLE(バイスクル 、バイシクル)」
名前の由来は文字通り背面の自転車のデザインから来ています。サイズはポーカーサイズと呼ばれているもので、日本で売られている一般的なトランプに比べると少し幅広です。
比較的手の小さい日本人向けのサイズ(ブリッジサイズ)も存在します。
日本からだと、Amazonや楽天、東急ハンズ等で買うことができます。一般的なデックだと1つ350円から700円程度で購入することができます。
*トランプカードのひと固まり、1セットをデックと呼びます。
適当なトランプであれば100円ショップなどでも購入できるので、それに比べるとかなり高額な印象を持つかもしれません。
しかし、このBICYCLEはそこら辺のトランプとは一線を画した、まさにトランプ界におけるエースとも言うべき存在なのです。
BICYCLEは1894年UnitedStatsPlayingCard社から発売されました。現在では世界一の売り上げを誇り、カードを使うマジシャンの多くはBICYCLEを使用しています。
では一体どのような理由から、BICYCLEは人気を得ているのでしょうか、解説していきましょう。
高い品質
BICYCLEはエンボス加工と言われる、カードの表面を小さな凹凸で覆う加工がなされています。
これによりカードを重ねている時でも、中に空気が入り滑りを滑らかにします。滑らかなカードのプレイングが可能な為、多くのマジシャンに愛用されている秘訣でもあります。
BICYCLEは紙製ですが、普通に売っているプラスチック製のトランプと比較しても比べ物にならない程滑らかです。
恐らく、普通のトランプしか触ったことない方はBICYCLEを初めて手にした時、今までにない衝撃を受けます。
まるで一枚一枚にオイルを塗っているかの様。
ぬるぬるです。
それ程までに滑るのです、
本当に滑らかです。
この滑りの滑らかさを感じる為だけに手に入れる価値もあるかと思う程です。
因みにこの滑りは開封したてが最も滑り、使う内に徐々に手に馴染み滑りにくくなっていきます、その点では消耗品ですね。
驚くべきデザインの豊富さ
BICYCLEの人気のもう1つの理由は、圧倒的なデザインのバリエーションにあります。
そのバリエーションは多過ぎるあまり正確な数を把握することができませんでした。
しかし、絶版品や限定生産の物を含めれば300種類を優に超えると予想されます。
そのデザインはシンプルなものからメタリック加工の物、星座が両面に印刷されたものなど非常に多岐に渡ります。
中には、52枚を上手く並べると地図になるBICYCLE ESCAPE MAP という製品も存在します。
これは第二次世界大戦中に実際に配布されたものを復刻したものであり、当時兵士たちに配られたBICYCLEには逃避行のための実際に使える地図が記されていました。
(ばれないように濡らすとカードが二枚に分かれて地図を確認できる仕様でした。)
それをモチーフに描かれたデザインは、現代においても当時のロマンを感じることができます。
私のお気に入りは、全52枚の裏面が全て異なる色のカードで組まれたデック、
BICYCLE SPECTRUMです。
非常に鮮やかで美しい上に、なんと色の並びにはマジシャン用の仕掛けにもなる工夫がなされています。
BICYCLEのカードデザインは非常に美しいものが多く、ホイル加工やメタリックなものなど思わず集めてみたくなるようなものばかりです。
またレアなデックやビンテージ品には高い値段が付けられるなど、最早ただのトランプとは言えない価値を持っているのが、このBICYCLEなのです。
オハイオ製とKY製
ここからは非常にマニアックな話になってしまうのですが、BICYCLE好きな人が最も注目する部分がこれです。
どこの州で作られたのか。
普通の人からすれば、どこで作られたから何なのだと言いたいところですが、BICYCLEマニアからすればこれは大きな大きな問題なのです。
まず第1に、現在正規品で新しく生産されているBICYCLEは全てKY製(ケンタッキー州製)なのです。
一方オハイオ製は2009年頃迄に製造されていた、いわばビンテージものです。
正規品としてはもう売っていません。
かつて、BICYCLEを始めとする多くのトランプを製造しているUSPC社の工場はオハイオ州にありました。
その工場は2009年を境にケンタッキー州へと移ったのですが、
何と工場の変遷と共にトランプの質が変わってしまったのです。
細かく言うと、オハイオ製に比べKY製は耐久性が低く滑りが悪くなり易い性質を持っているのだとか。
さらに、トランプを曲げた時のハリやコシ、反りのつきにくさもオハイオ製のものの方が良質だったそうです。
これが原因で、現在オハイオ製はプレミアが付いており、同じカラーリングやデザインでもオハイオ製の製品の方が高い値が付けられています。
オハイオ製とKY製の見た目の違いは外箱の生産地表示と封印用のシールから見分けることができます。オハイオ製は青いシール(左)、現在生産されているものは黒シール(右)。
稀に箱にはオハイオ製と記載されていても、シールが黒色の場合中身のカードはKY製ということもあるようです。
BICYCLEマニアなら、トランプが長きに渡って生産された当時の香り残すオハイオ製デックを、是非ストックしておきたいと思うはずです。
因みに、マジシャンの様にカードの磨耗が激しいプレイングを行わなければ、KY製の物でもすぐに使えなくなったりするなんてことはないのでご安心下さい。
p.s
トランプと一口に言っても非常に奥が深いものです。プレイングのための品質、様々なデザイン、コレクションとしての価値、
ただのカードゲームに収まらない、知られざる多くの魅力がトランプには隠されているのです。
家族や友人とトランプゲームをするときに、一つこだわりのトランプを持っていても良いかもしれません。
是非一度、世界最高のトランプBICYCLEを手に取って、その美しさや滑らかな手触りを感じてみてはいかがでしょうか。